犬に鹿肉を食べさせても大丈夫!
山間部で暮らしている飼い主様はご存知だと思いますが、増えすぎた鹿は畑を荒らすため駆除の対象となっています。
また、駆除した野性鳥獣を食することを「ジビエ」と呼んでいます。猟師さんからのおすそ分けで、鹿肉をいただくことがあるかもしれませんね。
現代のように犬がペットになる前は、肉食動物として暮らしてきたわけですが、こうした野性の鹿肉を食べさせても大丈夫なのでしょうか。
結論からお伝えすると、犬に鹿肉を食べさせても大丈夫です。むしろ、犬にとってヘルシーな食材です。ただし、野生の鹿肉だからこそ注意したい点もあります。
今回は、鹿肉の栄養や安全に犬に食べさせるための注意点についてお話ししていきます。
鹿肉の栄養が犬にもたらすメリット
鹿肉は高タンパク質・低脂肪・低カロリー
鹿肉の栄養の最大の特徴は、「高タンパク質・低脂肪・低カロリー」な点です。
高タンパク質で有名な、鶏ささみに匹敵するタンパク質を含んでいます。
豚ロースと比較すると、タンパク質は約2割増し、脂肪は約1/13、カロリーは半分以下。
鹿肉は、犬に最も大切なタンパク質が十分に摂れる上、脂肪分も少ないことから消化がよいお肉です。
ダイエットで食事量を制限しているワンちゃんや、高齢犬にもおすすめです。
ミネラルが豊富
鹿は野草や木の実、皮などを主に食べています。鹿が育つ地域によっても若干異なりますが、鹿肉には豊富な「鉄」や「亜鉛」、「リン」といったミネラルが含まれているのも特徴です。
豚ロースと比較すると、鉄は約10倍、亜鉛は約2倍、リンは同程度含まれています。
・鉄
犬において鉄不足が起きるのは稀ですが、摂取不足が続けば貧血を起こしてしまいます。特に、ダイエットや食欲不振で長期間食事量が少ないワンちゃんや、生理中には欠乏しがちです。
・亜鉛
亜鉛は健康な皮膚や被毛の維持に必要なミネラルで、肝疾患をサポートする役割も持っています。
犬に鹿肉を食べさせることで、鉄欠乏性貧血や肝疾患の予防が期待できると言えるでしょう。
・リン
リンは、カルシウムやマグネシウムと共に働き、骨や歯を作るのに必要なミネラルです。さらに、エネルギーを蓄える働きや、神経や筋肉が正常に働くのをサポートします。
鹿肉を始めとする肉類や卵、チーズなどの動物性食品に多く含まれます。
リンが欠乏すると、成長が遅れたり骨が変形したりします。反対に、犬の体内でリンが過剰になるとカルシウムとのバランス(※)が崩れ、骨や歯が弱くなると考えられています。
しかし、犬に肉だけを食べさせていなければ、あまり神経質になる必要はありません。
(※)カルシウム1:リン0.8が目安
機能性成分「カルニチン」
最近注目されているのが、鹿肉に含まれる機能性成分「カルニチン」です。アミノ酸から合成される物質で、D-カルニチンとL-カルニチンの2種類があります。
注目したいのはL-カルニチンには脂肪燃焼を促進する働きがある点です。人ではダイエットをサポートするとして知られていますが、犬にとっても有益に働きます。
特に、心疾患を抱えているワンちゃんや高齢犬の場合は、よりL-カルニチンを必要とするので、鹿肉で補うのもよいでしょう。
L-カルニチンは、水に溶けだす水溶性なので、茹で汁や炒めた際に出る汁も食べさせてあげてください。
犬に鹿肉を食べさせる際の注意点
鹿肉として出回っている多くは、野性鹿を猟師が駆除したものです。豚や牛といった家畜肉と違い、解体処理に関する法規制がありません。
また、山で捕獲した鹿を一度養殖し、安全性を確保した上で衛生処理後に販売するケースもありますが、豚や牛に比べればかなり少ない量しか流通していません。
衛生処理によって、どの程度鹿肉のリスクが下がるかはよくわからないため、ここでは野性の鹿肉であることを前提に話を進めていきます。
犬にも鹿の生肉は食べさせてはいけない
厚生労働省によると、鹿の生肉は寄生虫やE型肝炎を起こすウィルスを保有していることがあるため、加熱してから食べるよう推奨しています。
ほかにも、鹿刺しを食べた人が、腸管出血性大腸菌O157食中毒を起こした事例もたくさんあります。
また、日本獣医学会では、犬においても「生食は厳禁」と明言しています。
その理由として、犬も肝炎を起こす可能性があることや、野性鹿にどのような病原体がどのくらいいるのかは調査・研究段階であること、食肉加工段階で獣医師による検査が行われていないことなどを挙げています。(2017年9月時点の情報)
臭すぎる鹿肉は食べさせない
狩猟した鹿の血抜きのタイミングが遅れると、肉が固くなったり臭くなったりします。もし、猟師さんからいただいた鹿肉が臭すぎる場合は、躊躇せずに捨ててしまいましょう。
実は、捕獲した鹿のすべてが食肉やドッグフードに利用できるわけではありません。血抜きの甘さや狩猟犬の噛み傷、散弾銃の弾の多さ、銃弾による内蔵破裂などにより、全国で捕獲される頭数の5%程度しか食材として活用されていないのが現実です。
販売されている野性の鹿肉はこうした問題をクリアしているはずですが、あまりにも安過ぎる鹿肉は、人間には食べられない廃棄処理される肉かもしれません。
ワンちゃんに鹿肉を食べさせるなら、通販サイトの口コミを参考に購入するのもよいですが、品質の高い人間用の鹿肉を買い求めるとよいでしょう。
鮮度や大きさにも注意して
日本の狩猟解禁は、11月15日から2月15日と定められていますので、食肉の多くが冷凍保存されています。
食中毒を予防するためにも、解凍後はできるだけ早く調理して食べさせてください。
ブロック状の鹿肉の場合は、犬の体格や食べ癖に応じて適度な大きさに切ってから食べさせましょう。
大きいまま食べさせると、ワンちゃんの本能に火が付いて喉を詰まらせてしまうかもしれませんので注意してください。
ミンチ状の鹿肉は食べやすいのがメリットですが、肉の酸化を防ぐため、できるだけ早めに使い切りましょう。
腎臓トラブルがあるワンちゃんは注意
鹿肉に限らず、肉類はリンに対してのカルシウムが少ないため、極端にバランスが崩れています。
腎臓の機能が低下しているワンちゃんや、すでに尿毒症など病気を抱えているワンちゃんには、タンパク質やリンが悪影響を及ぼすので、鹿肉を食べさせるのは控えたほうがよいかもしれません。
獣医師さんからもタンパク質やリンの摂取制限があるかと思いますので、現在の食事に鹿肉をプラスしても大丈夫なのか、必ず確認してください。
安全性を確保して犬に鹿肉を食べさせよう!
鹿肉は高タンパク質・低脂肪・低カロリーで、ミネラルや機能性成分も含んでいるヘルシーな食材です。
しかし、寄生虫やウィルスによる肝炎の心配もあるため、犬に食べさせる前には必ず加熱する必要があります。
また、手作り食を食べさせている場合、肉だけを使った食事では栄養バランスがよくないので、ほかの食材も利用してください。
鹿肉の衛生面などが心配な方は、地方自治体や業界団体が認証する「HACCP(ハサップ)」認定されていることを目安にしてください。
日本ではまだまだ流通量が少ない鹿肉ですが、ワンちゃん用のオヤツとしても活用されています。ワンちゃんがほかの肉に飽きているようなら、鹿肉で目先を変えてみるとよいでしょう。